3月2日、鳩山総務大臣が、既に工事中の東京駅前にある旧東京中央郵便局の改築現場を緊急視察した。これは、日本郵政グループが、駅前一等地の5階建ての庁舎跡地に、一部を残して38階建てのオフイスビルを新築する計画に、歴史的建造物の保存の観点から疑問符を投げかけ、現場に足を運んだものだ。大臣は、視察後「これは、トキを焼いて食うようなもの」と、合理主義に走る郵政新会社を強く批判した。これに対し、竹中元総務大臣は、郵政民営化の路線変更を含む「政治の口出し」と牽制、政治闘争的に発展しそうな動きだ。しかし、鳩山大臣は、かねてから環境党宣言をするなど、文化財にも造詣が深く、政局がらみの突然変異ではない。隣接の三菱村と呼ばれる丸の内オフイス街に、最近、懐かしいレンガ街の一部が再現され話題を呼ぶなど、世の中の風潮だ。
保坂は、銀行協会ビルの保存運動や、東京駅原型復元や遠く小樽運河の保存運動にも参加してきた歴史がある。現在、地元上野公園では、仏の建築家で近代建築の祖といわれるコルビジェの作品、国立西洋美術館を世界遺産にする運動を台東区、東京都と共に展開中だ。
又、重要文化財を含む、5千坪の都立公園化に成功した岩崎本邸復活運動では、引き続き、完全復活と公園化に向けての猛運動を続けており、今回の、総務大臣の指摘は,大変に重いものと受け止めている。文化財保存運動は、いわば、ライフワークの思いだ。
大体、現場の目の前の東京駅舎は、現在、旧駅舎復元に向けて改築中で、空襲で焼ける前にあった3階の復元がされる。東京都は、これに伴い、丸の内側からの修景を確保するため、駅舎中央の背後となる八重洲口前のビル再開発計画に見直しを求め、私権の制限まで踏み切っているのだ。尚、周辺では、銀行協会ビル、日本工業倶楽部ビル、第一生命ビル、大同生命ビル等の民間の開発で、いずれも文化財保護が視点になってきた。お手本がいくつもあり、関係者の間では、中央郵便局が、元々国有財産だっただけに、国の姿勢が試されていた。いわば、関係者の間では、注目の案件だったのだ。 郵政側に、国民財産の継承者の意識があるのか。
大体、郵政側には、文化財保存の意識が薄いとしか思えない節がある。文化庁も、保存を強く要請していたし、内部の再開発委員会でも、ほとんどの委員が、歴史的建造物として全面保存せよ」と主張していたそうだが、郵政会社は、新ビル完成後には、毎年100億円の収入がみこめ、郵便会社の経営を支える財政計画の柱になると耳を貸さなかった。その結果、言い訳程度に、前部のみ残す38階建て案を強行している。これでは、文化財や歴史より利潤追求を重視しているといわれても、返す言葉もあるまい この事件は、本来、政局とか、郵政の路線問題に関する問題ではない。東京は、累次にわたり、大地震や戦禍で、文化財が消滅しているのだ。このビルは、日本建築学界が、歴史的建造物に、早くから登録している、かけがえのない国民財産で、根本を忘れずに、財政計画を立てるべきではなかったのか。
鳩山総務相の判断は、必ず世論の支持を受けるだろう。私も、支持をしたい。
右は、公開された重要文化財の洋館本官。中央は、重文指定の和舘。左が、現在、財務省が使用中の旧司法研修所本館で、平成25年に売却される。今、東京都が、懸命な取得作戦を展開中。保坂が働きかけて出来た運動体〈岩崎本邸完全復活公園化協議会〉が、背後で猛運動中。