恩賜上野動物園に、初めて中国から、カンカン(康康)とランラン(蘭蘭)のジャイアントパンダが贈られたのが昭和47年でした。以来36年間、平和の使節として、日本中の人気をさらいました。あの愛くるしい顔と仕草、文字通り生きた縫いぐるみでした。
3頭の子供が生まれました。しかし、時代が経過し、今年4月、リンリン(陵陵)の死亡以降、上野動物園には、パンダがいなくなったのです。中国からのパンダの再提供を望む都民の声は一段と高まり、プラスティツクでできたパンダ像の前で、写真を撮っています。そして、中国、胡錦濤主席の来日という願ってもない機会を得たのです。福田首相は、早速、中国の理解を求め、去る5月7日開かれた首脳会談の席で、2頭のジャイアントパンダの貸与について合意されたと発表されました。本当に嬉しいニュースです。
ところが、世界の希少動物としてパンダを懸命に保護する中国は、日本側に、飼育への補助、餌料である竹林等の保護への支援金として一億円の拠出を要請したことが公になりました。これについては、一斉に反発の声が上がり、パンダを外交手段にしたケシカラン。法外なパンダのレンタル料は、足元を見ている等々の非難ごうごう、マスコミも、ここぞとばかり尻馬にのったのです。しかし、私は、この中国の善意である行為を曲解するような反論が出ていることに、改めて憂慮を覚えています。
考えてみれば、リンリンの容態は、既に、昨年秋に悪化していたとも聞いています。万が一のことがあった時はと、東京都も対応を考えていたとも聞いていました。
その上、パンダの故郷、四川省は、大地震で、パンダの犠牲も出る、保護林はズタズタの被害、パンダの全ての施設は、最悪の状態と聞きます。その様な、状況下での中国の判断なのです
中には、そんなに高いパンダは、東京にはいらないとか。神戸市の王子動物園で観れるとか言いますが、神戸市は、既に、年100万米ドルを支払っています。これは、明確に「中国野生動物保護・支援金」として、市議会が承認し、神戸市民も納得しているのです。その他にも、中国との共同事業として7頭のパンダを飼育中の和歌山県白浜のアドベンチャーワールド(A・W)に行けば良いなどの反論も出ました。もっとも、A・Wは、中国成都大熊猫繁育基地の日本支部の肩書です。従って、和歌山のすべてのパンダは、成都基地本部の所有となっています。確かに、広大な面積のこのテーマパークは、パンダの飼育では、中国以外では世界最大規模と実績。必見の価値がありますね。
しかし、上野動物園は、何と言っても都心に位置して、交通至便な位置、今でも、日本一の来園者があります。その上、今日まで、中国と飼育情報を交換しながら、世界的なレベルに至った希少動物の保護、飼育技術の蓄積があります。上野動物園は、日本国内で、最も効果的な飼育場所として、中国側に逡巡は無かったと聞きます。
そもそも、上野の山は、東叡山寛永寺山内の聖地でありました。明治以来は、自然と文化施設が集積した憩いの場として、 広く国民各層から親しまれてきました。園内にある国立西洋美術館は、コルビジェ(仏)の一連の作品として、世界遺産候補となっています。この一角にある恩賜上野動物園は、正に、生命の大切さを私達に教えてくれるに、今日の社会に、最もかけ替えのない存在として、世界的に評価が定着している動物園であります。必ず、パンダにふさわしい生息地になります。
そもそも、マスコミが付けた「レンタル料」という表現は、正しかったのでしょうか。言葉の専門家たるマスコミは、もう少し日本語を大切にして、正鵠を射る表現を考えるべきでした。このように、ある種の意図で表現された言葉が、どうも独り歩きしているきらいがあります。その上、チベット人権問題がある中国に、睥睨外交とは何だ、バンダの提供拒否をせよと、都議会に陳情が出る有り様です。
いよいよ、来月、洞爺湖・環境サミットが開催されますが、実は、パンダの生息環境の保護は、中国の森林環境の保全に直結し、二酸化炭素の吸収源の保全こそ、世界の環境保護につながるとの洞爺湖サミットの精神でもあります。 この際、もう一度冷静になつて、善意と希少動物保護の原点から、世界的レベルの飼育、保存技術の蓄積を誇る恩賜上野動物園への受けいれについて、実現に至るよう、日本政府と東京都の判断を求めたいと思います。